
この記事は、ホープン(旧社名:プリントボーイ)が創業より続けているアナログコミュニケーション、“お元気ですかはがき”のテーマと連動した内容となっております。
今回から「お元気ですか」は新シリーズになります。新シリーズでは、「言葉で紡ぐ」をテーマに、様々な視点から“言葉”が持つ力や、メッセージを紡いでいきます。
「言葉」は心の内にある想いや概念を形にし、伝達するための道具です。そんなコミュニケーションの原点とも言える「言葉」について、奥深さや魅力に触れてみませんか。
今回は、「菖蒲」を題材に、言葉の魅力をお伝えいたします。
なお、記事で紹介しました今回のテーマを、 “お元気ですかはがき”として、ご希望のお客様のお手元にお届けいたします。記事とあわせてぜひご覧ください。
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※お元気ですかの前回のシリーズの記事はこちら↓
▼【日本の心を感じる文様シリーズ】その他の記事は以下よりご覧ください!
▼「気軽に取り組むSDGs!」バックナンバーをまとめたこちらの記事もお楽しみください!
・SDGsへの貢献!環境に配慮した用紙の活用事例をご紹介
◆目次
1.「菖蒲」は何と読む?

今回のテーマである「菖蒲」は、何と読むでしょうか。実は「しょうぶ」と「あやめ」、2通りの読み方があります。どちらも花の名前を指しますが、同じ漢字があてられているのには、理由があります。それは、「しょうぶ」も「あやめ」も、元は同じ植物を表す言葉だったからです。
アイリスの仲間で、葉が「ショウブ」によく似ている現在の「あやめ」を、かつて「(はな)あやめ」と呼んでいましたが、やがて「はな」が省かれ、「あやめ」と呼ぶようになりました。一方、現在では、「(はな)しょうぶ」を「しょうぶ」と呼ぶことが一般的になってきており、端午の節句の菖蒲湯(しょうぶゆ)に「はなしょうぶ」の葉を入れる方もいらっしゃいます。

2.「しょうぶ」とは?
日本語で「しょうぶ」と呼ばれる植物には、見た目が似ていて混同されがちな次にご紹介する「あやめ」などがありますが、その中でも「花が咲くしょうぶ」として一般的に知られているのは「花菖蒲(はなしょうぶ)」なのではないでしょうか。
「はなしょうぶ」は、初夏の風物詩として親しまれている美しい花で、5月から6月にかけて見ごろを迎えます。よく見られる青紫色以外にも、青・白・ピンクなど多彩な花色で梅雨の季節を彩ります。
「はなしょうぶ」の花言葉
「はなしょうぶ」の花言葉には、「優雅」「うれしい知らせ」「あなたを信じます」などがあります。大切な人への想いや信頼を込めたメッセージが込められています。
3.「あやめ」とは?
「あやめ」は、5月の初夏の時期に咲く花です。細長く尖った花びらが幾重にも重なり、まるで文様のような繊細な模様を持つ花で、漢字での別名「文目(あやめ)」は、花びらに浮かぶ「文(あや)」のような模様に由来し、古くは「綾目(あやめ)」とも書かれていたようです。
「あやめ」の花言葉
「あやめ」の花言葉は、「良き便り」、「希望」、「あなたを大切にします」を意味しているとされています。大切な人への思いやりや願いが込められており、今回のお元気ですかのテーマである「良き便り」と重なるため、今回選定いたしました。
「あやめ色」は5月の伝統色にもなっている
あやめ色は、あやめの花びらに見られる、赤みを帯びた紫色のことです。この色は5月の伝統色にもなっていて、平安時代には貴族たちが装束として身にまとい、和歌にも詠まれるなど、日本人の美意識と深く結びついてきました。また古くは、その気品のある色は上流民の色とされ、最古では飛鳥時代の制度「冠位十二階」での最高位に、この紫、つまり「あやめ色」が定められていました。現代でも、梅雨前の曇り空や雨模様の風景に合う、静かで気品を持つ色として親しまれています。
「菖蒲」という言葉ひとつを取ってみても、同じ漢字で別の読み方や意味があるという日本語の面白さや奥深さがあります。このような言葉のことを、「同形異音語(どうけいいおんご)」といいます。
4.「同形異音語」とは?
同形異音語とは、同じ漢字表記でありながら、読み方(音)や意味が異なる語のことを指します。日本語はその豊かな表現力とともに、様々な興味深い特徴を持っています。発音が同じで意味が異なる「同音異義語」とともに、日本語を学ぶ方にとっては特に面白く、時には困惑を招く要素とされています。
これらの語は文脈や読み方によって意味が区別されますが、初めて学ぶ人にとっては理解が難しく、混乱することが多いといわれています。
「同形異音語」のその他の例
今回ご紹介した、「菖蒲(しょうぶ/あやめ)」以外にも、以下のようなものがあります。
・最中(もなか/さいちゅう/あやめ)
・色紙(いろがみ/しきし)
・素振り(そぶり/すぶり)
・風車(かざぐるま/ふうしゃ)
・大事(おおごと/だいじ)
・上手(うわて/じょうず/かみて)
・人事(じんじ/ひとごと)
・生物(せいぶつ/なまもの)
・利益(りえき/りやく)
・背筋(せすじ/はいきん)
このように同じ漢字表記でも、文脈によって読み方や意味が異なる場合があります。
文字や文章に「同形異音語」が含まれる場合、読み手に混乱や誤解を生む可能性があるため、円滑なコミュニケーションをするためには、以下の工夫がおすすめです。
・読みに「ルビ(ふりがな)」を振る
・カッコ内に読みを併記する
・文脈に応じて意味を補足する
5. 今回のデザインポイント
現代でも様々な場面で使用されている「菖蒲」ですが、「お元気ですかはがき」に落とし込む上でのポイントを、今回デザインを担当したデザイナーにインタビューしました。
デザインへのこだわり
ポイント①:今回「お元気ですかはがき」をデザインする上で、「菖蒲」という漢字が「しょうぶ」「あやめ」の2つの読み方を持つこと、そして両者が花としても似ているというのを表現するよう、対のデザインで表現いたしました。
ポイント②:実際の花の写真を入れるデザインや、その他のデザインも検討しましたが、読み方や色の違いを際立たせると共に、折り紙で折ったような色の面積の広いグラフィックで、それぞれの花を表現し、色の違いも感じていただけるようにしました。
※その他候補のデザインイメージ
色彩へのこだわり
今回のテーマ「菖蒲」の読み方の一つである、日本の伝統色の「あやめ」色、そして「しょうぶ」色は、それぞれ異なるカラーコードが定められていました。
その美しい色合いが伝わるよう、カラーコードを踏まえて色を設定しました。
●菖蒲色(しょうぶいろ)
●菖蒲色(あやめいろ)
ぜひ紙でも、色合いをお楽しみいただきたく、「お元気ですかはがき」でご確認いただけたらと思います。
フォントへのこだわり
今回もはがきの添え文には、皆さまがより読みやすいよう「ユニバーサルデザインフォント(UDフォント)」を使用しました。
UDフォントとは、誰にでも読みやすく使いやすいように設計されたフォントのことです。
目の不自由な方や高齢の方、外国の方など、多様な人々が使いやすいように、文字の形状や間隔が工夫されています。
特に、視認性や可読性に優れ、公共施設や教育機関、企業の資料など、幅広い用途で使用されています。
「UDフォント」についてご興味がある方は、以下の記事をご確認ください。
▼ユニバーサルデザインフォント(UDフォント)についての記事はこちら
今、ユニバーサルデザインフォント(UDフォント)が求められている理由とは?誰もが見やすい文字について解説
印刷紙へのこだわり
はがきの用紙には、「ルミネッセンス マキシマムホワイト」という高白色・高平滑のアート紙を採用いたしました。
今回選定した紙以外に和紙なども検討いたしましたが、CMYKの発色の再現性に優れている点や、インク本来の色味をクリアに表現できることが採用の決め手になりました。この紙を選んだことで、あやめ色としょうぶ色の違いや微妙な色彩の差異を際立たせることができました。
また、この紙は「白さ」があるだけでなく「滑らかさ」があるのもポイントです。紙に「滑らかさ」があることで、印刷する際のインクが入りやすいという特長があります。さらに、他の高白色紙に比べ、紫系や青系の色が沈まず、冴えた印象を保ってくれる点も大きな魅力です。
この用紙は、こんな用途におすすめです。
・ブランドロゴやCI入りの名刺に高級感のある白さと滑らかな質感で、ロゴカラーの精度とシャープな印象を両立し、初対面の印象アップにも効果的です。
・冊子やリーフレットの表紙に高い平滑性により、写真や図版のコントラストが引き立つため、表面をビジュアル重視でデザインしたい場合におすすめです。
・ギフト用メッセージカードに白地が明るく華やかで、贈り物の品格を損なわず美しい仕上がりになります。
手書きインクの乗りも良いため、メッセージカードとしてもおすすめです。
印刷紙は、写真ではなかなか伝わりにくいため、ぜひお手元で品質をご確認いただきたいと思います!
以下のフォームから「お元気ですかはがきのサンプル」をお申込みいただけましたら幸いです。
6. まとめ
「お元気ですか」の新シリーズ「言葉で紡ぐ」の第一弾として、今回は「菖蒲(しょうぶ/あやめ)」をご紹介いたしました。
「菖蒲」という一語でも、複数の読みや意味の違いがあり、同じ漢字でも読み方や意味が異なる「同形異音語」としての菖蒲は、まさに“言葉の奥深さ“を感じられる言葉だったかと思います。
それぞれの花に込められた色彩や花言葉などを通じて、言葉がいかに豊かで、時代や文化を超えて私たちの心に響いてきたかを感じていただけましたら幸いです。
“言葉”は、単なる記号ではなく、私たちの感情や記憶、文化を形にする力を持っています。本シリーズでは、今後も様々な視点から、日本語の奥深さや、言葉がもつ魅力をお伝えしていきたいと思っております。ぜひ、次回の発行もお楽しみいただけますと大変嬉しく思います。
ホープン(旧社名:プリントボーイ)では、今回のような特別なお手紙・ダイレクトメールの制作など、コミュニケーションに関するコンテンツ制作を通じてお客様をサポートしております。
印刷物のご相談はもちろん、動画制作やその他のコミュニケーションに関する幅広いコンテンツ制作までご提案が可能です。ぜひ、お気軽にご相談ください。
\コミュニケーションに関することは、ホープン(旧社名:プリントボーイ)にお気軽にご相談ください/
※こちらもあわせてお読みください。
▼前回のお元気ですかのシリーズ「伝統文様」についての記事はこちら
- 【日本の心を感じる文様シリーズ】日本の伝統文様 其の一 矢絣(やがすり)
- 【日本の心を感じる文様シリーズ】日本の伝統文様 其の二 青海波(せいがいは)
- 【日本の心を感じる文様シリーズ】日本の伝統文様 其の三 七宝(しっぽう)
- 【日本の心を感じる文様シリーズ】日本の伝統文様 其の四 麻の葉(あさのは)
- 【日本の心を感じる文様シリーズ】日本の伝統文様 其の五 鱗(うろこ)
- 【日本の心を感じる文様シリーズ】日本の伝統文様 其の六「千鳥(ちどり)」