
映像制作において、視聴者の印象を左右する重要な要素のひとつが「色の調整」です。なかでも、撮影した映像をより魅力的に仕上げ、ブランドや商品の世界観を視覚的に伝えるために欠かせないのが「カラーコレクション(カラコレ)」「カラーグレーディング(カラグレ)」です。
今回は、「動画のインパクトが弱い気がする…」「色の調整が何を意味するのか、いまいち分からない…」などの動画制作に関するお悩みをお持ちのマーケティングのご担当者様や、動画制作をしてみたいが何がポイントかわからないなどのお悩みをお持ちの方に向けて、カラー調整の基本から、視聴者に“伝わる映像”を実現するためのテクニックなどを、当社ホープンの映像制作スタッフの庄司が、ホープンの制作事例を踏まえて、解説いたします。
この記事を読んで頂けましたら、色味調整を行うことは、“映像の印象を左右する演出”になると、ご認識いただけると思いますのでぜひご覧ください。
◆目次
1.映像制作で活用されるカラー調整とは?
映像制作には、企画・構成・台本の準備、カメラや照明・マイクを使った撮影、そしてそれらの素材を一つの映像作品へと仕上げていく編集作業など様々なステップがあります。
今回、ご紹介する「カラー調整」は、この編集段階で欠かせない工程のひとつです。
編集というと、カットを繋げたりテロップを加えたりといった作業を思い浮かべるかもしれませんが、“色”の調整もまた、映像の印象を大きく左右する重要な編集作業です。
それでは、なぜこのカラー調整が必要とされているのか理由をご紹介します。
2.カラー調整が必要な理由
映像制作で「カラー調整」が必要な理由は、以下3点があります。
理由①撮影機材の多様性による色味の違いが出てしまうため
シーンごとに、業務用カメラ、ミラーレス、スマートフォンなど、異なるカメラが使用されるケースが多くあります。
機種ごとにセンサーの特性や色再現性が異なるため同じシーンでも、色味が異なってしまうため調整が必要になるからです。
カラーバランスを調整することで、シーンが切り替わっても視聴者が違和感を覚えず視聴してもらいやすくなります。
理由②撮影環境の変化により、明るさに違いが出てしまうため
※今回は、記事内での解説用に撮影時にカメラ側での色調整をせずに撮影を行っております。
屋内・屋外、朝・夜など、光源の種類や光の量が異なる環境で撮影されることにより、映像の明るさや色温度に差が出てしまいます。
そのため、同じ作品内でも色のトーンが不自然に変わってしまうため調整をした方が綺麗な仕上がりとなり、「自然なつながり」や「映像全体の統一感」を持たせるためにも、カラー調整は不可欠な工程といえます。
3.カラー調整の2つのステップ:カラーコレクションとカラーグレーディングとは?
カラー調整には、大きく分けて「カラーコレクション」と「カラーグレーディング」といわれる2つの工程があります。
「カラーコレクション」と「カラーグレーディング」は、作業やポイントがそれぞれ異なります。
カラーコレクションとは?
※今回は、記事内での解説用に撮影時にカメラ側での色調整をせずに撮影を行っております。
2つの工程の中で、まず始めに行われるのが「カラーコレクション」です。「カラーコレクション」とは、色味や明るさ、ホワイトバランスなどを正確な状態に補正し、“映像としての基準”を整える作業のことです。
複数カメラの映像を見た目のバランスが取れるように揃えたり、露出の過不足を修正したりします。
カラーコレクションの4つのステップ
「カラーコレクション」を進めるにあたり、4つのステップがありますのでそれぞれのステップをご紹介します。
①「明るさ」の調整
映像の明暗を整えるステップでは、「暗部」「中間調」「明部」といったパラメータを個別に調整します。これにより、白飛びや黒つぶれを抑えつつ、被写体のディテールを保った映像に仕上げることが可能です。それぞれのパラメータを調整し、映像の中の明るさや暗さのバランスを均一化していきます。
②「コントラスト」の調整
ベースとなる明るさが整ったら、次は映像の立体感や奥行きを作るために「コントラスト」を調整します。特に被写体と背景の差を強調したいときに有効で、視聴者の視線を誘導する効果もあります。コントラストの調整により映像全体の輪郭がはっきりとしてきます。
③「ホワイトバランス」の調整
シーンごとに異なる光源(太陽光、蛍光灯、LEDなど)による色温度(ケルビン)のズレなどを修正していきます。
撮影現場でもカメラごとにこのホワイトバランスの調整を行いますが、「カラーコレクション」では、より厳密に調整を行っていきます。これにより色が自然に表れ、正しい色味を再現できます。
④ 彩度/色相の調整
1~3のステップまでは、映像をならしていく(フラットにしていく)作業でしたが、最後に鮮やかさ(彩度)や色のバランス(色相)など色合いを調整していきます。
ここでは、全体の彩度だけでなく「特定の色だけを強調・抑制する」セカンダリーカラー補正も活用します。セカンダリーカラー補正とは、たとえば、肌色を自然に保ちつつ背景のグリーンだけを少し抑えることで、より人物を引き立たせることができます。
※今回は、カラー調整後のイメージがわかりやすいよう、写真と映像でご紹介いたします。(今回モデルも務めさせていただきました!)
カラーグレーディングとは?
「カラーグレーディング」は、演出意図に基づいて色味を調整し、映像の雰囲気や感情、ブランドイメージを表現するための作業のことです。「カラーコレクション」を行った上で、さらに調整として行われます。
たとえば、映画のワンシーンを温かみのあるトーンにすることで安心感を演出したり、寒色系でシリアスな空気感を出したりすることができます。
①カラーコレクションとの違い
カラーグレーディングは、カラーコレクションとは異なり、演出的・芸術的なアプローチが中心となる分野です。
色の正確さや均一性を求めるコレクションに対し、グレーディングは感情や世界観を表現することが目的で、決まった正解は存在しないのが特徴です。
②流行があるアートの世界
カラーグレーディングには時代ごとのトレンドがあります。
その時々の作品や文化に影響され、主流の色表現が変化するのもこの分野の特徴です。
③代表的な手法「ティール&オレンジ」
グレーディングの中でも有名なのが「ティール&オレンジ」です。この手法はハリウッド映画で大流行し、一時期の映画っぽい色合い、といえばこのティール&オレンジでした。
人の肌色はオレンジ系の色合いに分類されるため、その補色であるティール(青系)の色合いを強調することで、登場人物の存在感を強調する効果があります。
※「ティール&オレンジ」の色味や元画像との違いについては、具体的に映像などをご覧いただいた方が伝わるかと思いますので、こちらも撮影したものをご覧ください。こちら動画でも色味などご確認頂ければと思いますので、以下よりご確認ください。
▼(サンプル動画)ティール&オレンジのカラー調整の比較
ただし、ティール&オレンジのような表現は、カラーコレクションで整えた映像の色バランスを大きく変えてしまう側面もあり、流行った当時も、違和感が強いという批判的な意見も多く見られましたので、
グレーディングを行う際には、流行に乗れば良いというわけではなく、その映像が伝えたい感情、世界観、そしてメッセージを明確にした上で、最適な表現を選ぶようにしましょう。
4.カラーコレクション・カラーグレーディングの実施前と比較すると?
色調整に関しては、実際に、見ていただいた方が伝わるかと思いますので、実際に色調整の作業を行った動画を事例にご紹介していきます。カラーコレクション、カラーグレーディングを行う前と、行った後の色の質感などをご確認頂けたらと思います。今回は、既にリリースされているゆい吉のプロモーションムービーでご説明します。
まずはカラーコレクション、カラーグレーディングなしの撮ったままの状態がこちらです。(今回使用したカメラはSONY FX3というカメラです。)
実はカメラ側でも「LUT」という機能を用いることで、ある程度設定をつけて撮影が可能でしたので、撮る際に、カラーコレクション、カラーグレーディングの仕上がりイメージを想定しながら撮影しました。
そして、「カラーコレクション」を施したものがこちらです。
色の差やコントラストなど比べてみると、この時点で印象が違って見えるのはおわかりでしょうか。カラーコレクションによって、紙の白さや肌の色などがよりはっきりと見えるように調整しました。
そして最後に、「カラーグレーディング」を施したのがこちらになります。
店舗プロモーションのため、店舗空間の温かみや柔らかさ、暖色の明かりのイメージをすこし強調して表現しました。今回はある程度カメラ側でも設定を行っている関係で、極端な変化はありませんが、色調整なしのものと比べて、より店内のイメージが伝わっていたらと思います。
※カラコレ・カラグレのカラー調整を行いました、「ゆい吉のプロモーションムービー」は、以下よりご覧ください。
▼ゆい吉プロモーションムービー
5.まとめ
今回、「カラーコレクション」と「カラーグレーディング」についてご案内しましたがいかがでしたでしょうか。「カラーコレクション」と「カラーグレーディング」は、ただ色を整えるだけでなく、「伝えたい世界観」をより深く表現するための繊細な工程です。
わずかな色味の差で、印象や雰囲気が大きく変わるため、微妙なニュアンスの調整が必要になりますので、コツや技術が必要になります。ブランドムービーなど動画の仕上がりにこだわるなら、プロにお任せするのがおすすめです。
ホープンでは、目的や使用シーンに応じたカラー調整で、視聴者の心をつかむ映像づくりをサポートしております。今回事例としてご紹介いたしました、プロモーション動画の制作から、展示会用映像、採用・広報動画まで、動画制作のご支援が可能ですので、お気軽にご相談ください。
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