東日本大震災から10年。塩害に負けない、復興への想い「東北コットンCoC」

東日本大震災から10年。塩害に負けない、復興への想い「東北コットンCoC」

創業50年の印刷会社が提案する「気軽に取り組むSDGs!」Vol.5 

この記事はプリントボーイが創業より続けているアナログコミュニケーション、“お元気ですかはがき”のテーマと連動した記事となります。記事で紹介しました環境に優しい用紙の実物を “お元気ですかはがき”としてご希望のお客様のお手元にお届けいたします。記事とあわせて是非ご覧ください。

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  • SDGsを自組織に取り入れるヒントを得られる
  • 「東北コットンCoC」、「FSCⓇ認証」についての情報が得られる
  • パーパスブランディングのヒントが得られる

 

私たちの生活には「衣食住」を欠かすことができませんが、「衣」の要素に関連した、SDGsにつながる紙があることをご存じでしょうか。

それは…「東北コットンCoC」です!その名の通り、綿(コットン)の茎繊維を主な材料として作られた紙であり、豊かな風合いや、保存性の高さが特徴の紙で、環境配慮につながるFSCⓇ認証用紙でもあります。

名前に冠している「東北コットン」は、「東北コットンプロジェクト」の取り組みを通じて生まれた紙であることを表しています。東日本大震災の津波被害による破壊や塩害により、東北の農業においても甚大な被害が発生しました。

「もうお米は作れないかもしれない・・・」希望を失うような状況の中で、アパレル関連企業が中心となり、東北地方の被災農家と共同プロジェクトとして、塩害に強いとされる綿(コットン)栽培支援が始まりました。そうしてできたコットン茎を使用して生まれた紙が、山櫻社が販売する「東北コットンCoC」という用紙です。

今回の「気軽に取り組むSDGs!」では、「東北コットンCoC」についてのご紹介に加え、「東北コットンプロジェクト」の取り組みについてご紹介させていただきます。このプロジェクトを知っていただき、皆さんの普段のくらしに取り入れていただくきっかけとなれば幸いです。

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Photograph: NAKANO Yukihiderights reserved by Tohoku Cotton Project

■津波による塩害がもたらした、東北の農業への甚大なダメージ

東日本大震災における農林水産関係の被害は甚大なものでした。

第180回国会に提出された農林水産省の報告によれば、東日本大震災の被害額は、新潟県中越地震(1,330 億円) の約 18 倍、 阪神・淡路大震災(900 億円) の約 27 倍となる2兆4千億円と言われ、このうち農業関係の被害額は 9,500 億円もの金額にのぼります。農地の損壊が1万8千か所で被害額4千億円、農業用施設等の損壊が1万8千か所で被害額4,800 億円、農作物や家畜等の被害額 600 億円となっています。

岩手県、宮城県及び福島県の太平洋沿岸地域を中心に、およそ2万4千ヘクタールの農地に海水が浸入し、農地・農業用施設に甚大な被害が発生し、津波が引いた後も、がれきの堆積や塩分による作物の生育障害が発生し、お米作りができない状況になってしまいました。

いわゆる「塩害」と呼ばれるもので、海水や海底の土砂等が農地に浸入し土壌中の塩分濃度が上昇することで、収穫や品質に悪影響が発生します。

浸透圧によるストレスで作物の根の水分吸収機能が低下して作物の生育が減退したり、ナトリウムイオンや塩素イオンなどの有害な成分を過剰吸収したり、養分の吸収が阻害されたりなど、作物の栄養と代謝機能に異常をきたします。塩害対策としては、政府の支援のもと農地に真水を注入し代掻きを行い、土壌中の塩分を水に溶かして排水する作業を実施することが一般的ですが、排水設備を破壊された東北の農地ではこの対策もままなりませんでした。

 

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Photograph: NAKANO Yukihiderights reserved by Tohoku Cotton Project

■お米づくりから綿づくりへの転換を支援。農家の皆さんともう一度立ち上がるためのプロジェクト。

その状況をみて、立ち上がったのが、「東北コットンプロジェクト」でした。

震災からの復興、農業の再生という目標に向かい、稲作が困難になった農地で耐塩性の高い「コットン(綿)」を栽培し、農業を再開できるようにすること、さらには、仕事を失っていた農家の離農予防や雇用創出等を行いたいという考えから、多数のアパレル関連企業が参加し、現地の農家・関連する方々とチームになって紡績、商品化、販売までを一貫して行うという新事業を創造することを目的としています。

稲作地帯であった宮城県の荒浜地区・名取地区でプロジェクトは始まりました。多くの農地や世帯が津波によって流され、人命や財産を失った状況の中で、多くの方々が気力を失っていました。

発起人の一人である大正紡績株式会社、営業部長(当時)の近藤氏は、震災の起こるまでの20年の間、世界各国で津波や高潮の被害にあった土地に綿を植えて、
塩害から再生する取り組みを行っていました。そんな折、東日本大震災が発生したことで、これまでの取り組みで日本に貢献できないかと思い、
その年の5月10日に行われた「コットンCSRサミット」で、発起人のメンバーであるアパレルのリーダーを前に「綿花で東北を救おう」という話をしたことがきっかけで、全員が拍手をして賛同し、プロジェクトとしてみんなでやろう、となったことがきっかけとなりました。アパレル数社、現地の農家の有志の方、農業法人、JAなど、関係者が発起人となり、綿の栽培が始まりました。

綿は稲よりも塩害に強いものの、種まきは手植え、草刈り、収穫作業、ジニング工程(綿と種をとりわける作業)…など、多くの手間がかかる植物です。震災による直接的な被害、その後の被災生活により人手も足りない状況の中、個人や賛同企業によるボランティア、農業高校などの生徒たちによる支援など、多くの人々が参加して、これらの作業に加わりました。

収穫したコットンは全量をプロジェクトで買い取り、参加企業により製品化が行われます。参加企業では、収穫された綿を活用したタオルやハンカチ、ジーンズやマスク、Tシャツ、紙・・・など、様々な工夫を凝らした商品企画や、コレクションなどを開催し、「東北コットンブランド」の認知度をあげ、購入することが支援につなげるよう、取組みが進められていきました。

荒廃した土地で綿が芽吹き、花をつけ、コットンボールができていく。そんな様子は、気力を失った農家の皆さんを勇気づけたそうです。

被災者としてただ支援を待つだけでなく、自分たちの力で復興させよう、東北をコットンの力で再生させよう、そんな想いが誇りになり、モチベーションとなっていきました。

種まきや収穫を支援し、収穫を祝うために多くの人々が東北に足を運ぶことになり、コットンが新たな人と人との交流の輪を広げていくことになりました。最初の年は、段ボール2箱分の収穫だったところ、今では東北コットンプロジェクトの畑が日本で一番大きな綿花畑となっているほどに、年を重ねるごとに大きなものとなっていきました。

「東北コットンプロジェクト」の取り組みは、震災から立ち直ることを震災以前のものに戻していくということではなく、新たにビジネスを起こし、サステイナブルな形で成立するよう再構築していくという意味で、先進的なものであるといえます。

東北コットンCoCという用紙

■一枚一枚の繊維の模様や味わい深い、コットンの茎から出来た紙

「東北コットンCoC」シリーズは、プロジェクトに参加する山櫻社が開発・販売する、「東北コットンプロジェクト」で栽培された綿(コットン)の茎から採取した繊維と、

森林認証パルプを原料にした用紙です。「東北コットンプロジェクト」を支援することにつながるだけでなく、国際規格であるFSCⓇ認証を受けた用紙でもあります。

FSCⓇ認証はSDGsの目標13の指標の一つでもありますが、さらにこの用紙を使用することがサステイナブルである理由があります。

木は成長するまでに何十年、何百年もの長い期間が必要となりますが、コットンは一年草なので、毎年収穫できるという利点があります。そのため、木材だけでなくコットンの茎を配合することで、木材の使用量を減らせるという点も、SDGsの目標に貢献しているといえます。

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用紙の見た目にも特徴的です。紙に綿花の茎が漉き込まれているので、一枚一枚の繊維の紋様が異なっており、真っ白な紙とも違う味わいのある風合いが楽しめることが特徴の一つです。名刺や封筒、エシカルな紙製フォルダなど、東北コットンCoCを利用した様々な製品があります。

■相性のよい活用の仕方は?

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Photograph: NAKANO Yukihiderights reserved by Tohoku Cotton Project

「東北コットンプロジェクト」は、製品を購入することで誰でもが東北を支援することができるという取り組みでもあります。

コットンを多く使用する、アパレルのメーカーや販売業の方々にとっては、製品をお客様に届けるにあたり接点となるプライスタグ、ショップカード、ショッパー、DMなどにこの用紙を活用いただくこともおすすめです。
また、これまでプラスチックで作成していたものを、紙で作成するということもよく検討されるようになりました。

コロナ禍で対面のイベントが減っていましたが、少しずつ開催や参加を検討する企業、学校等が増えてきています。そんな中で、ツールも今までと同じではなく、SDGsを意識したツールづくりや、運営方法についてご相談をいただくことがプリントボーイも増えてまいりました。そこで、プラスチックにかわり、名札ケースやファイル式など次第FSC認証を受けた製品で作成することなどもおすすめしています。

まとめ

今回は東北コットンプロジェクト、そしてそのプロジェクトから生まれた「東北コットンCoC」という用紙についてご紹介をさせていただきました。

以前にご紹介したサトウキビのしぼりかすを使用したバガスペーパー、バナナの茎を使用したバナナペーパーは、主に発展途上国の方々を支援することにつながる用紙でもありましたが、
「東北コットンCoC」はこの日本で災害の影響を受け、困っている人たちを支援することにつながる用紙です。プリントボーイはこの取り組みを応援し、この用紙をご紹介することで、皆さんにもぜひ「東北コットンプロジェクト」について知っていただき、身近なツールづくりに生かしていただければと考えています。

SDGsへの取り組みは、これが正解というわけではなく組織の状況、歴史により、色々な形があると私どもは考えています。

コットンが東北の農家とアパレルメーカーを結び付け、拡がる過程で多くの企業が参加したプロジェクトとなったように、まずは取り組みをはじめようと一歩を踏み出すことが重要ではないかと思います。印刷物づくりやコミュニケーションツールづくりにおいても、そんなお客様の状況やありたき姿をお伺いしながら、取組みにつながる用紙のご提案ができればと思います。

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