食品からアパレル、メーカーなど、有形商品を扱う業種なら必ず関わってくる商品管理。適正な在庫量で効率良く利益を出すためには、不可欠な業務とされています。
それでも、
「自社で商品管理するのは、コストもかかるし負担が大きい」
「商品管理を効率化するためにはどうすれば良いのか」
など、商品管理にまつわる悩みを持つ企業関係者も少なくありません。
そこで本記事では、最も効率化を図れる手法として商品管理のアウトソーシング(外注化)を取り上げ、自社管理とアウトソーシングの違いやアウトソーシングするメリットを解説します。
1.商品管理とは?
まず、商品管理の具体的な意味について、在庫管理との違いとともに説明します。
1-1.商品管理は在庫管理を含んだ幅広い業務
商品管理とは在庫管理を含んだ物品の管理全般を意味します。入出庫によって日々在庫が変化する在庫管理単体の意味とは異なり、製造業ならば、商品を構成する原材料や部品の納入から在庫管理、取引先への納品までが商品管理となっています。
一方、小売業の場合、商品の仕入れから在庫管理、商品をどのような顧客を対象にどういった戦略で売るかを示す販売戦略(マーケティングや販促活動)なども商品管理に含まれます。
1-2.在庫管理との違いとは
上記でも述べたように、商品管理は在庫管理よりも業務領域が広がります。
在庫管理は、取引先への商品納入などで日々変化する在庫数を正しく管理するのが目的です。販売管理と呼ばれる商品販売に関連した業務のひとつに位置付けられており、帳簿に記載した数字と実際の数値を比較し、在庫数をミスなく管理することが求められています。
一方、商品管理は業務範囲が広範なため、事業全体の収益に大きく関わってきます。
1-3.商品管理の目的
商品管理は、「販売計画の策定」「在庫の健全化」「業務量の削減」の3つを主な目的としています。
販売計画の策定
いくら商品の売れ行きが良くても在庫過多になれば収益がマイナスに陥りやすくなります。現金化できていない商品が多く、販売できない商品は損失になり得るからです。一方で、在庫が足らず欠品してしまうと、販売機会を逸してしまいます。つまり、商品管理は需要に対する適正な販売計画の策定と密接な関連性があるということです。
在庫の健全化
商品管理の中核的な業務は在庫管理です。
適切な在庫管理は「商品の流れ」を明確にします。商品管理を徹底していくと、どのような商品が市場に受け入れられるか(売れ筋の商品)、商品がどのくらいのスパンで売れるのか(売れる期間)、商品がどのくらい売れるのか(売れる数量の目安)が見えてきます。
結果として、過剰在庫や在庫不足の解消、不要な商品にかかっていた管理コストの削減を実現するのです。
業務量の削減
商品管理によって、棚卸し業務やロケーション管理が適正化されるので、無駄な業務量と業務時間の削減、スペースの最適化によって効率的で入出荷が可能になります。
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2.在庫を自社で保管するデメリット
商品管理を自社で手がける企業は多いものの、そこにはデメリットやリスクも伴います。構成する業務のうち、在庫管理に焦点を当てて説明していきます。
2-1.保管コスト
在庫の保管には、多大なコストがかかります。仮に自社で倉庫を持つ場合、設備投資費用は莫大なものになります。光熱費や保険料なども考えなくてはなりません。スペースを借りる場合も、毎月の賃料や管理費がかかり、事業者の背中に重くのしかかってきます。
2-2.手間
在庫管理は、保管場所をしっかり確保し、「整理・整頓・清掃・清潔」の4Sを遵守して適切に実施しなければなりません。
商品が、どこにどのような状態で保管されているか明確にするのはもちろん、保管場所を「棚・列・段」の番号に割り振って決め、商品の入出庫を正確に記録するのは不可欠です。しかし、在庫管理の業務ではさまざまな問題が発生し、大きな手間がかかります。起こりがちな問題には以下のようなものがあります。
- 商品の品種や、正確な数が記録できていない
- 入出庫管理で入力漏れやミスが起こっている
- 商品をいつ持ち出し、保管場所をどこに移動したのかを管理できていない
- 品物の管理環境が悪く、破損や紛失が起きている
これらの問題は人為的ミスに起因するものがほとんどです。ミスによって生まれる損失も大きく、フォローアップにかかる手間も増幅します。
2-3.人件費
自社による在庫管理の負担の中で、最も大きなウエイトを占めるのが人件費です。人件費は単純化すると、以下の作業にかかります。
- 在庫商品を取りに行く
- 在庫商品を探す
- 在庫商品を入れ替える
いずれも簡単な作業ですが、必要な業務です。しかしコア業務に比べて時間が奪われやすく、残業の遠因にもなります。残業代の増加は企業にとってのコスト増であると同時に、従業員のモチベーションやワーク・ライフ・バランスの低下にもつながりかねません。
3.商品管理でアウトソーシングできる業務内容とは?
これらの問題について、商品管理をアウトソーシングすることで課題を解決できるケースがあります。まず、アウトソーシングできる具体的な業務内容について説明します。
3-1.入庫管理業務
入庫管理業務は、商品の品目や数量、置く場所を確定し、システムに在庫を計上する業務を指します。商品を倉庫に入れる「入荷」の次にあたる行程です。
入庫管理業務は問題が起きやすい業務フェーズで、人件費がかさむ要因になりますが、アウトソーシングによって正しい入庫管理とスピーディな商品配送を実現します。
3-2.保管業務
保管業務は、商品を倉庫で預かり、入庫管理で記録した通りの数量を適切に管理する業務です。入庫から取引先への出荷との時間のズレを解消する需給調整が主な目的です。
保管業務をアウトソーシングすることによって、商品の数量計算などのミスが減らせます。委託先によっては、アイテム別管理やロケーション管理など、商品に応じた管理も可能なので保管能力の向上にもつなげられます。
3-3.受注業務
受注業務は、電話やFAX、メールなどから受けた注文書など、受注情報を販売管理の部署に送り、倉庫や工場へ出荷指示を出す一連の業務のことです。
受注業務をアウトソーシングすると、煩雑な受注情報を販売管理部門に送る業務がなくなり、商品管理が円滑化されるでしょう。
3-4.ピッキング業務
ピッキング業務は、倉庫に保管されている商品の中から、注文された商品を選び、必要な個数だけ集荷する業務です。
ピッキング業務をアウトソーシングすると、間違った商品や間違った数量などピッキングミスを軽減できます。業者によっては、倉庫管理システムにつながったハンディスキャンを使い、商品のバーコードを読み取って実施するほか、入庫時期が古い商品から出庫する先入れ先出しにも対応もします。
3-5.流通加工
流通加工は、倉庫や工場から製品や原材料が出荷される前に、商品に付加価値を付けるための一連の加工作業です。製品の箱詰め作業や食品のパッケージングが該当します。
流通加工をアウトソーシングすると、委託先の業者がラベルの貼り付けやタグ付けなど細かい作業を手がけ、商品の見栄えがよくなり顧客満足度の向上にもつながります。専門的な知識が必要な装置の組み立てをしてくれる業者もあり、商品管理の生産性も向上するメリットがあります。
3-6.梱包・出荷
梱包は、商品を段ボールなどの箱に入れたり、商品を保護するためにクッション材に包んだりする作業です。出荷は、商品を納入先に発送する業務です。
いずれも目立たない業務ですが、完成した商品を納入先に届けるまでの重要な作業です。アウトソーシングを取り入れると、出荷スピードなどの効率が上がるだけでなく、商品の形やほかの同梱物に配慮した梱包を手がけてくれるため過剰梱包を減らして資材費のコストダウンにもつながります。
3-7.印刷物のオンデマンド出荷
業者の中には、出荷にあたり、必要な印刷物を必要なときに必要な分量だけ印刷する「オンデマンド印刷」を導入している企業もあります。
紙媒体の商品は、自社在庫を持つリスクが大きい商品ですが、オンデマンド印刷を手がける業者にアウトソーシングすれば、そうした懸念が解消されます。この印刷システムは、少量多品種の印刷に対応するため、印刷コストや無駄な在庫を大幅に削減するメリットがあります。
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4.商品管理をアウトソーシングするメリット
商品管理をアウトソーシングすることで得られるメリットについて説明します。
4-1.固定費を変動費に変えられる
商品管理をアウトソーシングするメリットは、人件費や保管費用など従来は固定費だったコストが、変動費に変えられ削減もできることです。
作業員を自社で雇用し、保管している場合は、物量が多い少ないに関わらず、毎月一定の費用がかかります。これに対し、商品管理の工程をアウトソーシングすると、物量に比例する形で作業量が増えるシステムになるので、コストを柔軟に管理できます。
物量が少ない月はその分費用が減り、固定費と変動費を積算した損益分岐点を下げられるので、企業の財務フローが健全化します。
4-2.コストダウンが可能
コストの変動費化と重なる部分ですが、外注化によってコスト削減のメリットを得られます。
人件費のほか、倉庫やそれにかかる設備、出荷時に使う車両などを自社で持つ必要がなくなります。また、自社で商品管理をする場合は、商品の入出庫管理から保管、梱包に至るまで、一連のシステム構築が求められます。
大企業ならまだしも、中小企業が一からシステムを構築するのは費用負担が大きすぎるといえます。一方で、委託先の企業は効率的な商品管理を実現するノウハウを持っていることが多く、自社での商品管理より低コストでの管理を実現します。
4-3.コア業務に集中できる
アウトソーシング全般に当てはまりますが、商品管理の外注化によって、コア業務に割く時間と労力が確保できるメリットが得られます。煩雑な商品管理業務に時間と労力を投入する代わりに、コア業務に人的リソースや経営資源を投入できるようになります。
4-4.注文数・顧客増加に柔軟に対応できる
時期によって商品を取り扱う量に差がある場合でも、商品管理のアウトソーシングによって、注文数や顧客が増加しても柔軟に対応できるようになります。
あらゆる業種にメリットがありますが、特に大きなメリットを享受できるのはEC事業。この事業は、季節商材や流行商材を多く扱っており、売上が時期によって大きく変わりがちで、倉庫料や車両費といった固定費が高ければ高いほど事業リスクも増えます。
こうした状況下で、商品管理にアウトソーシングを導入すれば、商品の注文増加や顧客増加が起きても、事業が大きく脅かされることはありません。需要に応じて変化する繁忙期、閑散期というリスクを回避できるでしょう。
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まとめ
商品管理は、多くの企業に発生する業務で、この業務工程を効率化できるかが業績にも大きく関わってきます。このことから、商品管理におけるアウトソーシング化の有効活用が、今後の企業発展に大きく影響を及ぼすといっても過言ではありません。
物流の流れが早く、商品管理を自社で完結することがリスクになる現代のビジネスシーンにおいて、無駄なコストを省くため、商品管理のアウトソーシング化を選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
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- 在庫管理の商品管理の違いとは?効率化のための方法も解説|FunBiz
- 自社物流と物流アウトソーシングのメリットデメリット|サイテキ
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著者プロフィール
- BST編集部
- HOPEN(旧社名:PRINTBOY)の新規事業を企画・運営する部門がお届けする、業務改善お役立ち情報サイト”BST”の編集チームです。多種多様なメンバー+その時々のゲストメンバーで、皆様の日々の業務における”困った””わずらわしい””こうだったらいいのに”を解決する情報をお届けします!