近年注目されている「リスキリング」について、定義や背景を解説いたします。
AI技術やデジタル化の進展により、仕事やスキルの在り方が大きく変化する中、リスキリングは企業や個人が変化に対応し続けるための重要な取り組みとなっております。
本記事では、リスキリングの基本的な考え方や実際に取り組まれている事例もご紹介しますのでご覧ください。
◆目次
1.リスキリングとは?
リスキリングとは、「新たなスキルを習得することでキャリアや業務の転換を可能にする学習プロセス」を指します。(出典:経済産業省「未来人材ビジョン」)
この定義は、経済産業省が2022年に発表した「未来人材ビジョン」で詳しく説明されています。
この取り組みは、単なるスキルアップにとどまらず、業務の在り方そのものを変革し、新たな価値を創出することを目的としています。
具体的には、AIやデジタル化の進展によって生じた新たな課題や、従来のスキルでは対応が難しい状況への適応を目指します。
このビジョンでは、デジタル人材が企業の競争力を左右する重要な要素として位置付けられており、特に技術革新への対応力や新たな業務領域へのスムーズな移行が重視されています。
また、少子高齢化による生産年齢人口の減少も、リスキリングの必要性を高める要因として挙げられています。
経済産業省の資料によると、既存の人材を最大限に活用するための人材育成や雇用制度の見直しが提言されています。
リスキリングは企業と従業員の双方にとって重要な戦略であることがわかります。
参考情報
引用:経済産業省「未来人材ビジョン」2022年版(https://www.meti.go.jp/press/2022/05/20220531001/20220531001-1.pdf)
2.リスキリングを成功するための3つのステップ
ここでは、リスキリングを成功するためのステップを3つご紹介します。
2-1.必要なスキルを洗い出す
リスキリングを成功させるためには、まず現在のスキルギャップを把握することが大切です。
未来の労働市場に必要とされるスキルを予測し、それに基づいて計画を立てることが必要です。
2-2.適切な研修手法を選択する
研修方法として、対面・非対面(オンライン)どちらにするか選択しましょう。
研修をどのように行うかについては、内容や受講者のニーズに合わせて設計することが必要です。
社内研修に加え、内容によっては外部リソースを効果的に取り入れることも成功の鍵です。
2-3.多様な学習手法を組み合わせて学習効果を最大化する
研修内容を動画にし、多様な学習手法を組み合わせることで学習効果を最大化することができます。
また、社員のモチベーションを維持するために、適切なフィードバックやインセンティブを設けることも重要です。
そのため、様々なことを想定し体制を事前に整えておくことも大切です。特に問い合わせ対応は、関係者全体でサポートできる体制を構築しておくと安心です。
3.リスキリングに研修動画が効果的な5つの理由
リスキリングを推進する方法として、研修動画を制作することがおすすめです。研修内容を動画にすることで様々なメリットがあります。
ここでは、なぜリスキリングで研修動画がおすすめなのか、5つの理由をご紹介します。
3-1.新しいスキルを習得するための柔軟性がある
研修動画は、従来のスキルアップだけでなく、これまでにない新しいスキルを習得する場として活用できます。例えば、AI活用スキルやデータ分析スキルなど、時代に即したスキルセットを提供することで、従業員が新たな業務領域へシームレスに移行することを支援します。
さらに、研修動画は最新のトピックやトレンドを迅速に取り入れることができるため、企業全体でのスキルの陳腐化を防ぎ、競争力を維持する上でも重要な役割を果たします。
また、受講者は自分のペースで学習できるため、スキル習得のプロセスがより柔軟になり、多忙な業務スケジュールとも両立しやすくなります。
その他、講義形式だけでなく、実際の操作画面やシミュレーションを組み込むことで、実践的なスキルを習得する効果も期待できます。
このように、研修動画は従業員一人ひとりの成長を促進し、企業全体のパフォーマンス向上にも寄与するツールとして活用することができます。
3-2.実践的なスキル習得に役立つ
これにより、実際の業務で必要なスキルや具体的な事例を通じて、従業員の学習効果を高めることができます。
例えば、新しい業務プロセスや自社製品の操作方法などを動画で学ぶことで、実践的なスキルを効率よく習得し、日常業務への応用がしやすくなります。
3-3.研修動画の利便性と学習効率が向上
研修動画を利用することで、従業員は時間や場所を問わず学習が可能になります。これにより、業務の合間や移動中、さらには自宅での空き時間などを有効活用できるため、忙しいスケジュールの中でも無理なく学習を進めることができます。
さらに、視覚と聴覚を活用することで、情報の定着率を高め、効率的なスキル習得を実現することができます。
また、動画形式であれば一時停止や巻き戻し、再生速度の調整が可能で、受講者が自分に最適な方法で学習できる点もメリットといえます。
その他、教材を共有する際に物理的な資料の準備が不要であり、オンラインでの一斉配信が可能なため、コスト削減や管理の効率化もできますので、研修動画は利便性と学習効率を大幅に向上させるツールとしても、多くの企業で採用されています。
3-4.個別最適化された学習が可能
研修動画は受講者が自分のペースで進められるため、集合研修と異なり、進行速度が個々に最適化されます。また、苦手な分野や理解が不足している箇所を繰り返し視聴することで、効率的にスキルを習得できます。
さらに、受講者は時間や場所に縛られず、自宅や移動中でも学習できるため、忙しいスケジュールの中でも学習時間を確保しやすくなります。
これにより、受講者自身が計画的に学習を進めやすくなり、学習のモチベーションを維持しやすいというメリットもあります。
復習や必要に応じた見直しが簡単にできるため、学習内容の定着度を高めることができ、結果的にスキルアップのスピードを加速させる効果も期待できるため、研修動画の制作はおすすめです。
3-5.講師の負担を軽減
研修動画を活用することで、講師が同じ内容を繰り返し説明する負担を軽減し、より高度な質問への対応や個別指導に集中できます。
また、受講者の進捗状況や理解度に応じて適切なサポートを提供しやすくなるため、教育効果の向上にもつながります。
さらに、動画を事前に視聴することで受講者が基礎知識を習得できるため、対面やオンラインでの講義の時間を有効活用し、ディスカッションや実践的なトレーニングに重点を置けるようになります。
このように、講師と受講者双方の効率化が図れる点も研修動画のメリットの一つです。
4.自社制作と市販のeラーニングを比較すると?
市販のeラーニング教材にはコストや利便性の面でのメリットがありますが、自社の業務内容や独自の課題に特化したスキルを教える場合には、自社制作の研修動画が効果的です。
市販教材は汎用的な内容が多いため、全ての受講者にとって必ずしも適切であるとは限らず、特に業界や職種に特化したニーズに対応することが難しい場合があります。
一方で、自社制作の研修動画では、具体的な業務プロセスや事例を取り入れることで、受講者にとって実践的な学びを提供できるため、日常業務への応用がしやすくなります。
また、自社制作であれば、社員の声を反映した内容や、実際の職場環境に即したシミュレーションを取り入れることも可能です。これにより、受講者の理解が深まり、学習意欲の向上にもつながります。
さらに、自社制作の研修動画は、内容のアップデートやカスタマイズが容易で、企業の成長や変化に応じて柔軟に対応できる点も大きなメリットです。
例えば、新しい製品やサービスが導入された際には、それに対応した研修動画を迅速に制作・配信することで、従業員の知識やスキルの向上を効率的にサポートできます。
このように、自社制作の研修動画は、特定のニーズを満たすだけでなく、長期的な視点で見た際の教育投資としても有益な選択肢といえるでしょう。
5.リスキリングに取り組んでいる企業事例
リスキリングを取り組んでいる企業をご紹介します。ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。5-1.富士通株式会社
富士通株式会社は「人が活きる」 をテーマに、従業員が新しい価値を創造するために必要なスキルや知識を提供しています。デジタル社会の変革に対応するため、AI、クラウド、サイバーセキュリティなどの先進技術の習得を支援しています。主な施策は以下です。
1. デジタル革新人材の育成
富士通では、従業員に向けた「Fujitsu Learning Experience(FLX)」という教育プラットフォームを活用し、オンライン研修を提供しています。
AIやデータサイエンスの分野を中心に、多様なカリキュラムが用意されており、自発的に学び直しが可能です。
2. グローバル人材の育成
国際的なビジネスリーダー育成にも力を入れており、海外研修や語学支援を通じてグローバルなスキル習得を推進しています。
3. キャリア自律支援プログラム
従業員自身がキャリアの方向性を定め、必要なスキルを学び取るためのキャリアデザイン支援を行っています。
自己啓発を促す制度として、社内外の講座受講支援や資格取得支援も提供しています。
参考情報
参考:富士通公式サイト「Career & Growth Well-being」
(https://www.fujitsu.com/jp/about/csr/education/)
5-2.日立グループ
日立グループでは、デジタル化に対応するためのリスキリングを早くから推進しており、基礎スキルだけでなく変化を起こすマインドセットの育成にも注力しています。主な取り組みは以下の通りです。1. デジタル人材育成の段階的アプローチ
最初は事業シフトに対応するフロント系の人材強化とデジタル事業を推進するプロフェッショナル人材の育成からスタート。その後、全社員を対象としたデジタルリテラシー教育へと拡大し、全社的な対応力を強化しました。
2. 日立アカデミーの活用
2019年に日立グループ内の人財育成機関を統合して誕生した日立アカデミーが中心となり、社内外で年間約14万人が受講する研修プログラムを提供。これにより、グループ全体のDX推進力を向上させると同時に、他社への研修サービス提供も行っています。
3. SDGsを背景とした社会イノベーション事業の推進
2015年のSDGs採択を受け、社会イノベーション事業に舵を切る中で、デジタル対応力を強化。これにより、持続可能な社会の実現に向けた事業変革を支える人材を育成。この取り組みを通じて、基礎的なスキルに加え、変化を推進するマインドを備えた人材の育成を進めています。
参考情報
引用:日立アカデミーのDXリテラシー研修 知識習得だけでなく実践・実装を支援
(https://www.sentankyo.jp/articles/1d6234eb-4947-4c0c-a1e9-35a1765538ab)
参考:株式会社日立アカデミー「DXリテラシー研修」
(https://www.hitachi-ac.co.jp/service/opcourse/subcate/dx/dxliteracy.html)
5-3.キヤノン株式会社
キヤノン株式会社では、DX(デジタルトランスフォーメーション)を担う人材の育成に向けた取り組みを強化しています。主な施策は以下の通りです。1. 全社員対象のDXリテラシー研修
全社員対象のDXリテラシー研修約2万5000人の全社員を対象に、2023年3月から「DXリテラシー研修」を開始。
経済産業省の「DXリテラシー標準」に基づいた教育コンテンツを活用し、DXの基礎知識を網羅的に学ぶことを目的としています。
研修は6カ月間のeラーニング形式で行われ、現場の社員が自分の業務でDXを推進できる基盤を作ることを目指しています。
2. ソフトウェア人材の教育体系の改訂
DXの中核を担うコア人材を育成するため、2023年秋からカリキュラムを改訂し、「AI技術」と「クラウド技術」を基礎研修に必須化。
これにより、配属部門に関わらず全社員がAIやクラウドの基本知識を習得できるようにしています。
3. キャリアマッチング制度の活用
異部門への社内転職を促進する「キャリアマッチング制度」を改訂し、未経験者もDX分野に再配置される仕組みを強化。
これにより、社内の人的資源を最大限に活用し、DX人材を増強しています。
これらの取り組みは、DX推進に必要なマインドセットとスキルを社内全体で底上げしつつ、専門的な知識を持つコア人材を増やすことを目的とし取り組まれています。
参考情報
引用:日経クロステック「キヤノンがDX人材を2方面から増強、現場の底上げとリスキリングで」
(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/08356/)
引用:キヤノン株式会社「人材育成と成長支援 取り組み」
(https://global.canon/ja/sustainability/society/growth-development/initiatives/)
6.まとめ
リスキリングは、変化の激しいビジネス環境や技術革新に適応するため、企業や従業員にとって欠かせない取り組みです。
AIやデジタル化の進展、少子高齢化による人材不足といった課題を背景に、多くの企業が研修プログラムや教育体系の見直しに取り組んでいますので、人材活用で活用されるのはいかがでしょうか。
また、リスキリングにあたり研修内容を研修動画にすることも講師と受講者双方にメリットがありますので、研修動画を取り入れるのがおすすめです。
ホープンでは、研修資料のブラッシュアップから、教育・研修動画の制作を始め様々なコンテンツ制作をご提案が可能です。
またコンテンツ制作だけでなく、研修資料の発送や研修テキストの印刷・在庫管理などの研修に関連する業務を「BPOサービス」でご支援可能です。
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