
現在、世界の平均気温は上昇している中、この状況が続けば、自然災害のリスクが高まると予測されています。
これまで、パリ協定で気温上昇を1.5度に抑える目標が設定されるなど、世界的に取り組みが進んでいる中、このような気候危機や資源の枯渇を回避するために、日本でも2050年カーボンニュートラル(※)の達成という目標を掲げ、CO2排出量の実質ゼロを目指して民間、公的機関ともに取り組みが行われてきました。
※カーボンニュートラルの定義については、環境省の脱炭素ポータル(引用URL:ondankataisaku.env.go.jp)によると、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」から、植林や森林管理などによる「吸収量」を差し引き、全体として実質的にゼロにすることを指します。
さらに最近では、特に10代など若年層に対してもSDGsの意識や認知度が高まっており、将来の人材獲得の観点からも企業の取り組み姿勢が評価される側面もあるかと思います。
実は身近で活用している「紙」でもCO2削減の取り組みを行うことができることはご存じでしょうか。
そこで今回は、林業を元気にすることで、CO2排出量を実質ゼロにする取り組みを行う環境配慮型の紙「ZERO CO2 PAPER(ゼロCO2ペーパー)」について、「株式会社ペーパル」の矢田氏にお話を伺いました。
商品にまつわる開発秘話や商品を通した様々な熱い想いを伺いましたのでぜひご覧ください。
<インタビュー>株式会社ぺーパル:矢田 和也 氏
株式会社ペーパルの取締役として、新商品開発を手掛けていらっしゃいます。
株式会社ペーパルは、1890年創業の奈良県に本社を置く老舗企業で、130年以上にわたり紙の卸販売や新素材開発に取り組んでいます。
様々な素材を使った環境に配慮した紙の開発を行っております。例)食べられなくなったお米を活用した「kome-kami」など
株式会社ホープン:佐野
株式会社ホープンのコンテンツ企画制作・マーケティング部門を統括。
株式会社ホープン(旧社名:株式会社プリントボーイ)は創業50年以上、教育関連企業を中心としたコンテンツ制作・BPOサービスを行っており、現在はお客様のブランディング、販促物制作において環境配慮型への転換をご支援しています。
◆目次
-
- ゼロCO2ペーパーの特徴と、どのような仕組みでCO2排出量を実質ゼロにしているのか教えてください。
- ペーパル様の「林業」への思いについて教えてもらえませんか?
- 環境問題や社会問題を解決するための様々なお取り組みはどのように始まるのですか?
- 「ゼロCO2ペーパー」のプロジェクトでの苦労話や今に至るまでに過去大変だったことを教えてください。
- この商品をリリース後に、想定していなかったことがあれば教えてください。
- 私は、森が土砂災害を防いでいるというイメージがあるのですが、ペーパル様はどのようにお考えでしょうか。
- 今後、具体的にコラボレーションしてみたい分野などはありますか?
- さまざまな取り組みをされているペーパル様ですが、大切にしている信念や価値観についてぜひ教えてください!
- ぺーパル様が目指す、5年後・10年後に目指す姿を教えてください。
- まとめ
1.ゼロCO2ペーパーに関するインタビュー
佐野:「ゼロCO2ペーパー」の特徴と、どのような仕組みでCO2排出量を実質ゼロにしているのか教えてください。
矢田氏:ZERO CO2 PAPER(ゼロCO2ペーパー)は、紙の製造時に出るCO2排出量を極力減らしても減らしきれない分の排出量を「カーボン・オフセット」という仕組みを使うことで、CO2の排出量の実質ゼロを実現しています。
カーボン・オフセットとは、排出されたCO2を、別の場所で削減されたCO2によって相殺(オフセット)することで実質ゼロにする仕組みのことです。
矢田氏:国が認定する「J-クレジット制度(※)」を使い、紙を使用した重量相当のCO2をオフセットします。
(※)J-クレジット制度とは、森林の吸収や再生可能エネルギーの活用による排出削減量を「クレジット」として国が認定し、販売できる仕組みです。
矢田氏:また、「ZERO CO2 PAPER(ゼロCO2ペーパー)」は、日本の林業を元気にすることを目指し、脱炭素に貢献する紙です。森林の「温室効果ガス吸収」の取り組みを活用することで、林業の付加価値の向上に繋げています。また、印刷物を通じて林業の取り組みを発信することで、林業に従事する人を増やすことを目指しています。
佐野:「ZERO CO2 PAPER(ゼロCO2ペーパー)」には様々な魅力がありますね。森づくりの取り組みでカーボン・オフセットを実施し、紙を使うにあたって排出されるCO2を実質ゼロにする。
また、森林を手入れする活動を通じて林業の魅力を知ってもらい、林業従事者を増えるきっかけづくりにもつながる。ゼロCO2ペーパー(ZERO CO2 PAPER)を使うことでCO2の削減量も記載できるので、
ツールを受け取った相手にも取り組みを知っていただく機会につながるなど、まさに三方よしの取り組みに感じます。素敵ですね。
ペーパル様は歴史がある用紙メーカーさんであることからも、林業に対しての強い思いを感じます!
佐野:ペーパル様の「林業」への思いについて教えてもらえませんか?
矢田氏:日本は、林業の資源が多くあるにも関わらず、産業が縮小し、従事される方も少なくなってしまっている地域が増えています。
吉野郡天川村の従事された方にお話を伺うと、林業に従事する方がどんどん減っていて、林業を専業で行っている方も10人を切っている状況でした。
この状況を何とかしたい!という課題を伺う中で、その解決の糸口として発足したのが「ゼロCO2ペーパー(ZERO CO2 PAPER)」でした。
また近年は、世界的にも持続可能な社会の実現のため、脱炭素に取り組まないといけないという課題の解決が求められているのもあり、CO2を吸収する取り組みを、価値として提供できないかを検討されていました。
弊社ペーパルとしては、林業は奈良県以外もありますが、まずは吉野郡天川村の森林環境によりCO2を吸収する活動を応援して、その後全国の林業を応援していく取り組みを広げていけたらいいなと思っています。
佐野:「吉野郡天川村」のプロジェクトをきっかけに、この取り組みを全国的に広げていく、そのためには、ゼロCO2ペーパーを使っていただくことが、皆さんがこの取り組みを知っていただくエンジンになるということですかね。
矢田氏:そうですね。同じ紙を使うのであれば、「ゼロCO2ペーパー(ZERO CO2 PAPER)」を使ってもらう方が、日本の林業を応援できるので、ぜひ活用いただきたいですね。
どんどんこの取り組みを広げることで、日本の林業を元気にできたらいいなという風に思っております。一緒に応援してくれる方が増えるといいです。
佐野:今回の取り組みは、環境に配慮するだけでなく、日本の産業を元気にしようというところがすごく素敵なお話ですね。
矢田氏:何か事業をするのであれば、誰かが喜んでくれる、誰かのためになることをやりたいと思っていまして。実際に林業に従事されている方と会ってお話を伺う中で、そういう方たちを応援していきたいなと思います。
「ゼロCO2ペーパー(ZERO CO2 PAPER)」の紙をきっかけに、日本の林業について関心を深めていただいたり、環境問題について考えていただいたり、取り組みを認知してもらえたら嬉しいです。
実際に林業に従事している方自身も、「脱炭素の活動に貢献している」ということで林業に対するモチベーションアップにも繋がってほしいです。1人でも多く、林業へ関心を持っていただき、「林業をやりたい」と思ってくれる人が増えるきっかけになったらいいなと思っています。
佐野:ペーパル様の企画・開発されてきた紙のラインナップをあらためて見渡すと、フードロスの解消や、脱炭への貢献、林業の担い手を増やすことで事業を持続可能なものにし広げていくなど、環境への配慮だけでなく社会課題を解決しようとする想いを非常に強く私も感じています。
また、今までこうした課題を意識したことがない方、知らない方にとっても、非常にわかりやすく伝わる、素晴らしいお取り組みだなぁと。ぺーパル様は、以前からこういった環境問題や社会問題への問題意識が高いと思いますが、
佐野:環境問題や社会問題を解決するための様々なお取り組みはどのように始まるのでしょうか?
矢田氏:だいぶ早い段階から、色々構想を練ってじっくり商品化してきました。取り組みに関しては、専門の部署が中心で検討するというよりは、その都度プロジェクトを作っています。プロジェクトでは、私はいちメンバーとしている形でして、プロジェクトにアサインされたメンバーも割と意見を出して詰めていきます。
メンバーは製造の人以外にも営業のメンバーも入ってもらい、様々な知見を持ち寄って進めています。新たな取り組みをする上で意識していることは、誰かに喜んでもらう取り組みであるということだけではなく、「事業として継続できるように売れるものを作る」ということですね。そのために、企画段階から意識して行っています。
佐野:どんなに素晴らしいお志から始まった取り組みも、継続なくしては浸透が難しいですよね。そのために事業として継続できるかのジャッジもして、企画を進めていらっしゃるのですね。
矢田氏:そうですね。その中でも紙は色々な人の目に触れるので、その想いが広がってほしいなと思います。
佐野:手元に残る紙だからこそ、多くの受け取った方々に印象に残ってもらうというか、知っていただけるきっかけにもなりますもんね。ホープンでも展示会のブース演出でぺーパル様のゼロCO2ペーパーやkome-kamiを利用することが増えています。
その場でゼロCO2ペーパー(ZERO CO2 PAPER)やkome-kamiのマークをお客様が見ることで、「これは何でしょうか?」と会話になります。
用紙開発を先導された矢田さまに是非お伺いしたいのですが、
佐野:「ゼロCO2ペーパー」のプロジェクトでの苦労話や今に至るまでに過去大変だったことを教えてください。
矢田氏:この取り組みで特に難しかったのが、CO2を削減したというのをJクレジットとして認定してもらうことでした。
この認定には、細かい計算を積み上げて、この活動でどれだけ削減するというのを提出する必要があるのですが、様々な調整や連携に想定よりもだいぶ時間がかかりまして・・・。
苦労して、ようやく認めていただきましたが、3年くらいはかかっていると思います。
佐野:3年ですか!多くのご苦労があったのですね。それだけのご苦労があって認められた紙であると考えると、より安心して皆様にお使いいただけますね。
佐野:この商品をリリース後に、想定していなかったことがあれば教えてください。
矢田氏:商品をリリースする前は、林業に関わる業界や、林業に近い事業を行っているお客様が中心になるのかと思っていましたが、「脱炭素」は社会課題のため、どの業界でもご興味があるというのがわかりまして、業界問わずご使用いただいています。
例えば、金融機関でも使っていただいていますし、スポーツブランドの会社とかも。奈良県のお客様は、吉野の森林の取り組みを応援していることに共感いただき、全社的に使っていただくようになりました。
この取り組みは、お伝えした通り奈良県だけでなく全国に広げていきたいので、例えば、高知や鳥取、東北など様々な地域で連携しながら、柔軟に実施できたらうれしいです。
佐野:この取り組みは、全国に発展していけたら素敵ですね。話は変わりまして、最近、豪雨災害による土砂崩れなど、自然災害が各地で起きている印象です。
佐野:私は、森が土砂災害を防いでいるというイメージがあるのですが、ペーパル様はどのようにお考えでしょうか。
矢田氏:森林が管理されておらず放置されていると、土砂災害などのリスクが発生しやすくなるかと思いますので、もっと森林を管理できるようになると、自然災害の被害を縮小することに貢献できるかなと思います。
佐野:今後、具体的にコラボレーションしてみたい分野などはありますか?
矢田氏:例えば、国内の森林の木を木材で使用している建築会社様やデベロッパー様が、地域の木を使っているというPRをすることがありましたら、木材だけでなく脱炭素の取り組みも応援しているというのもアピール頂けると思います。
「ゼロCO2ペーパー(ZERO CO2 PAPER)」の取り組みをカタログや、パンフレットなどでも一緒に訴求いただくのも良いのかなと思います。
その他、地場産業や金融機関などでも、その地域の地域貢献という意味で、脱炭素の取り組みを応援していることをアピール頂くのも一つかと思います。
佐野:地域貢献に関しては、お客様からもキーワードとして取り組んでいきたいというお話をよく伺うので、「ゼロCO2ペーパー(ZERO CO2 PAPER)」を活用することで取り組まれるのは一つの選択肢ですね。
佐野:さまざまな取り組みをされているペーパル様ですが、大切にしている信念や価値観についてぜひ教えてください!
矢田氏:弊社は130年以上、紙に携わっている会社なのですが、「紙を通じて持続可能な社会の実現」を目指しています。
その一環として、脱プラスチックや食品ロス問題でフードバンクを応援したりなどの取り組みを通じて、社会を良くしたいという想いで様々な素材を活用して紙に展開しています。
佐野:「紙を通じて持続可能な社会の実現」という想い、素敵ですね。弊社も50年以上教育関係のお客様を中心にお仕事に携わっていますが、ツールとしての紙媒体に求められることが変わってきたなぁ。と感じています。
佐野:ぺーパル様が目指す、5年後・10年後に目指す姿を教えてください。
矢田氏:5年後には全国各地でこの「ゼロCO2ペーパー(ZERO CO2 PAPER)」のプロジェクトの取り組みが応援されて、広がっている状態になっていたらいいなと思います。
そして10年後には林業に良い影響を与えられていたらいいなと。できるだけ早く、全国に応援してもらえる状態にしたいですね。
5年、10年で・・・というよりは、5年、10年かけて、そういう状態に持っていきたいです。
そして、「ゼロCO2ペーパー(ZERO CO2 PAPER)」をきっかけに林業への関心や認知が広がり、もっと森林が管理されるようになり、CO2も削減できている状態になればいいなと思います。
佐野:5年、10年という少し長いスパンで、多くの方々と関わりながら広げていきたいという想いを感じました。お話をお伺いしたことでますます紙の魅力を知ることができ、ありがとうございました!
2.まとめ
持続可能な社会を実現するためには、環境問題への対応は必要不可欠です。
そんな中で今回ご紹介しました「ゼロCO2ペーパー(ZERO CO2 PAPER)」は身近な紙から取り組めるだけでなく、日本の産業である林業にも貢献できますので、紙の代替えから始めてみてはいかがでしょうか。
ホープン(旧社名:プリントボーイ)では、「ゼロCO2ペーパー(ZERO CO2 PAPER)」を活用したチラシやパンフレットなどの紙媒体の制作を企画からご提案させていただいております。
お客様の様々な課題に対応可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。
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