リモートワークが急速に普及したことで、仕事の進め方が大きく変わったと感じる人も多いのではないでしょうか。
リモートワークになっても同じか、それ以上に成果を上げられる人がいる一方、対面ではうまくいっていたことがリモートワークになってからは思うように行かず苦戦している人・・・そこにはどのような違いがあるのでしょう?
多くのビジネスパーソンにとって、リモートワーク・非対面の場面が増えた事がもたらした一番の変化は、「文章を書いて相手とコミュニケーションをする機会が圧倒的に増えたこと」でしょう。
この記事では、リモートワーク時代に仕事の成否を左右する、文章作成のポイントについて解説していきます。
1.リモートワークでは「文章」のコミュニケーション力が必須
1-1.対面で与えられていた、<言外の情報>が伝わらない
メール、企画書、ビジネスチャット、WEBサイト・・・等、直接会うことなく、仕事上必要なコミュニケーションの場面でテキストのみでやりとりをすることが増えています。
もちろん、電話やビデオ会議などのコミュニケーションで、文字情報以外のやりとりをする機会もゼロではないでしょう。
しかしながら、リモートワークが普及し、仕事相手がオフィスではなく自宅で働いている状況では、同じ空間を共有して打ち合わせをしていた時に比べて、やりとりができる機会も内容も限定的なものになっていると思います。
コミュニケーションの解説でよく取り上げられる「メラビアンの法則」では、対面している時、人は話している内容の印象<言語情報>よりも、身振り手振りや声のトーン、身だしなみなどの視覚・聴覚から受ける印象<非言語情報>が優先されると言われています。
言語情報は7%ほど、それ以外の93%は非言語情報から影響を受けているということなのですが、言い換えれば、直接会ってやりとりをする場面では、言葉に含まれない印象や微妙なニュアンスを、非言語以外の情報が補っていたということになります。
直接会ってやりとりをしていた時にはうまくいっていたことがうまくいかない、ミスコミュニケーションが起こって仕事に支障を来す・・・ということが、非対面で起きやすいのはこのことが要因です。
1-2.文章から「仕事能力」は判断される
前述のとおり、非対面では人柄という非言語の情報が十分に伝わりません。そんな中で仕事を依頼しようとすると、「その人が書いた文章」は信頼をはかる上で判断材料の一つとなります。自身を「発注者」だと考えていただければ、わかりやすいと思います。
重要な仕事を社内の人に依頼する時、外部の会社に依頼する時、重視することは「信頼して仕事を任せられるかどうか」でしょう。
信頼ができるということは、「ミスが少ない」、「期待通りの成果を上げてくれること」でしょう。それには、仕事相手の「慎重さ」、「思慮深さ」、「気が利くか(想像力があるか)」が気になるポイントではないでしょうか。
あなたが仕事の相談をメールでするというシチュエーションを想像してみてください。その時、相手から届いた返信メールが、こんな「ミスだらけ」だとしたら・・・どう思われるでしょうか。
① あなたの名前が間違っている
(ex.斎藤さんが佐藤さんになっている、社名の(株)の位置が間違っている、社名が間違っている)
② 誤字脱字が多く、読みづらい
(ex.ご覧ださい、お世話なております、連系して応対します、込みにケーション)
③ 変換ミスが多い
(ex.始めてお目に係ます、ご以来しました件、謝りがあり真琴に申し訳アリません)
④ 文章中のかけている字が多い
(ex.いつmたいへnお世話になっておりまs)
⑤ 一般的な漢字のひらがなが多い
(ex.いつもおせわになっております、ひろい工場におどろきました)
⑥ 住所や連絡先の情報が無い
(ex.注文する際の電話番号や申し込み先が載っていない、送り先が書いていない)
⑦ 内容にあわせた添付資料が無い
(ex.商品ラインナップはカタログに載っています、とあるが添付がない)
メールの文面から慌ただしさが伝わってきて、「慎重に仕事をしてくれるかどうか」、心配になると思います。また、ミスは無いだろうと見直しをせずそのまま送ってしまうこと、相手がどう思うかに配慮が至っていないことから、「思慮が浅いのではないか」とも思われるでしょう。
一般的な漢字のひらがなが多いことからは幼稚さが感じられ、また逆に相手がこの漢字が読めないだろう・・・などと、馬鹿にしていると感じた受け取り手もいるかもしれません。
本来は相手に何らかの行動を起こしてほしいために送った文章であるのに、連絡先や必要な資料がなければ問い合わせをしなくてはならず、相手の都合を考えていない、この人は気が利かないな、と感じた方もいらっしゃるでしょう。
仕事相手が本来はどんなに素晴らしい人柄を持ち、信頼できる人物であろうと、こうした文章コミュニケーションの不注意や配慮不足によって、大事な仕事の機会が失われてしまうのです。前提として、「テキストコミュニケーションが正確な人」ほど、仕事においてより信頼を得やすく、成果が上げやすいのです。
2.仕事の生産性を高める文章とは?
仕事はコミュニケーションの連続で成り立っています。
コミュニケ―ションとは「対人間における情報共有や意思疎通」を指しますが、そもそも私たちが「コミュニケーションを行うメリット」とは何でしょうか。
2-1.コミュニケーションをとることで、もたらされるメリット
普段はメリットを意識せずにコミュニケーションを行っている人も多いと思います。改めて挙げれば、大きくこの3つです。
① 信頼関係を構築する
② 承認欲求が満たされることで、精神の充足をもたらす
③ プロセスをスムーズかつ効率的に進める
この中で注目したいのは、③の「プロセスをスムーズかつ効率的に進めること」です。
仕事上で多くの方が成果と考えることは、目的に繋がるそれぞれの目標を達成すること・課題を解決することだと思います。限られた時間の中で、そのプロセスを早く、効率よく進められているかどうか、言い換えれば、生産性が高いかどうかが社会や会社からの評価にもつながります。
仕事は何らかの他者の関りが発生する中で進めていくことが多いため、そこで適切なコミュニケーションをとりながら多くの成果を上げられることが重要なのです。
2-2.ビジネスで生産性を高める文章とは?
コミュニケーションのメリットを活かし生産性を高める文章とは、「伝わりやすく、相手に早く行動を起こさせる文章」です。
それは、ビジネスの場面において、「シンプルで伝わりやすく、読みやすい文章」のことであると言えます。
シンプルではなく、読みづらい文章の特徴は、このようなものが挙げられます。
① 不要な情報が多く、見た目がごちゃごちゃしている
② 漢字が連続する文章
③ 専門用語やカタカナ語が多い
④ 句読点が少なく、1文が長い
⑤ 文章の型が起承転結になっていて、結論が最後まで読まないとわからない
⑥ 読み手に応じた書き方をしていない
「不要な情報が多い」文章とは、書き手の主観や憶測が多い、関係ない情報が多い文章です。読み手に正しく意図が伝わらずに誤解を生んでしまったり、行動変容に時間がかかります。最悪の場合、何が言いたいのかよくわからず、最後まで読んでもらえず門前払い・・・ということもあります。
先ほど簡単な漢字がひらがなになっていることがミスであると書きましたが、一方で漢字が連続してしまう漢文のような文章もまた、読みづらさに繋がるために注意が必要です。
▼ 漢字が多い文章の例
先日は貴重なご機会頂戴し誠に有難うございます。環境配慮用紙使用方法参考になりました。
▼ バランスを見てひらがなや読点を入れた場合
先日は貴重なご機会をいただき、誠にありがとうございます。環境に配慮した用紙の使用方法が参考になりました。
専門用語やカタカナ語が続く文章も、読みづらい文章です。相手を説得しようとしたり、知識の多さをアピールするために、難しい用語を並べたり、カタカナばかりの文章にしてしまうと、相手がその言葉を知らない場合にいちいち意味を調べなくてはなりません。
ただでさえ忙しい読み手が、その手間をかけて読むべき価値のある内容ではないならば、同じ内容を簡単な言葉でわかりやすく、誤解無く伝えられる人の方が早く成果を上げられることでしょう。
2-3.文章の型を決めることも重要
文章の型、つまり文章の構成、順番について意識することも重要です。学生の頃良いとされていた「話が起承転結になっている文章」も、「ビジネスにおいては読みづらい文章」です。
起承転結は「導入」→「発展」→「急転回(クライマックス)」→「結論」というストーリーのある文章で、話を面白くしようとしてこのフォーマットを意識して、この型で文章を書かれる方もいるかもしれません。一見、読み手を惹きつける良い文章ではないか?と思われるのですが、読み進めないと結論までたどり着けないため、早く結果を出すことが求められるビジネスの世界では不向きの文章の型であると言えます。
おすすめは、プレゼンテーションの場面でよく利用される PREP(プレップ)法と呼ばれる型です。
PREP法は、そのテーマの結論で文章を始め、それを補完していくという文章の構成で、「結論(Point)」→「理由(Reason)」→「具体例(Example)」→「結論(Point)」という流れの頭文字をとった言葉からそう呼ばれています。読み手がその文章の主張を冒頭部分のみ読むことでも理解できるため、限られた時間の中で書き手の意図がすぐに伝わります。
途中で話が展開して脱線することを防ぐこともでき、具体例を交えて説明することで読み手に正確に理解されます。
3.文章上達のコツとは?
文章を書く上で起きがちなミス、気を付けるべきことに注意していけば、文章スキルはある程度上達します。ただ、コミュニケーションの基本は相手がありきですので、自分自身では文章の問題に気づけないこともあります。
これまで述べたことを踏まえて、自分の書いた文章であれば周囲の人にクロスチェックをお願いしてフィードバックをもらう、読みやすく参考となる文章を見つけるなど、客観的な視点で見てみることをおすすめします。
特にフィードバックをもらうことで、自分では気づいていなかったわかりづらさ、読み手が求めている情報との差違に気づくことができます。時間をかけて文章を書いていると、いつの間にか「自分の書きたい内容」になってしまい、ターゲットとずれていくことがあります。自分の文章のクセに気づき、あくまで相手に伝わる文章になっているかどうかをフィードバックしてもらいましょう。
まとめ
リモートワーク時代に「文章力」が何故ビジネスに必須のスキルであるのかということ、そこで成果を出せる文章作成のポイントを解説させていただきました。この記事を通じて伝わる文章のポイントをおさえて、是非実際のビジネスでのコミュニケーションでお試しただければと思います。
コミュニケーションは相手がありき、そして文章でのコミュニケーションの上手さ(相手に正確に伝わるか)は、自分の書いた文章を客観視できるかどうかが肝です。
ただ、自分だけで取り組んでいてもなかなか客観視できないことも多いものです。伝わりやすいと感じた文章を真似てみることや、作成した文章を他の人に見てもらい客観視することなども上達の手段ですが、時間はかかります。とは言え、現実のビジネスシーンでは、お客様はあなたの上達にあわせてはくれません。
重要なお客様にコミュニケーションをとるためのコンテンツを常に生産していかなくてはならず、そんな時には用途に応じてプロをうまく活用していくことも選択肢の一つでしょう。
PowerPointの企画書、Webサイト、メールマガジンなど、お客様が検討材料にするようなツールについては、プロの力をうまく活用しながら作成していく、お客様とのコミュニケーションを円滑にするメールのコミュニケーションはブラッシュアップをしていくなど、ご自身のビジネスの状況にあわせたアプローチをとりながら、文章スキル向上につなげて頂ければ幸いです。
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